きびしくするか、甘やかすか 
 きびしくすべきか否か、それが問題だ。

 子育てや教育で、一番の問題はこれであろう。

たいていの親や教師はこの問題で悩む。しつけ論議の中心でもある。

きびしくするか、甘やかすか、権力主義か許容主義か・・・・・。

この問題は社会科学者が「偽の問題」と呼ぶものだ。また、二つの方法だけ

しか考えない、「あれかこれか」型思考の、一つの典型でもある。

もう少し詳しく説明しよう。

厳格な懲罰主義か、甘やかしの許容主義かの、二つのどちらかを選ぶ必要は

ないのだ。その両極端以外の第三のスタイルを選ぶこともできる。このことを

知っているおとなは、ほんの少ししかいない。

それでは、第三のスタイルは、両極端の真ん中なのか。ほどほどにきびしく、

ほどほどに甘くということなのか。まったく違う。

第三のスタイルは、きびしさと甘やかしという尺度が、全く当てはまらないのだ。

本書の中心となるのは、権威主義と甘やかしの、どちらでもない。

第三のスタイルは、もっと良くてもっと簡単である。

実行可能で、効果がある。そんな子どもとの接し方である。

ここでは、おとなが子どもに対する見方を変え、子どもの扱い方を変える必要が

ある、と強調しておく。

意欲さえあれば、この変化のための技能と方法は身につくのだ。

(『自立心を育てるしつけ』 トマス・ゴードン著 近藤千恵訳 小学館

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